わたしの隣の魔法使い
第8章 闇の国ジハナム
【その8】
私が『闇の国ジハナム』に来て思った事。
「私は今まで何体ものジハナムと妖精と戦ってきました。みんなとても強くて恐ろしくて、私一人ではきっとどうしようも出来なかったんだと思います。」
ワームにオーガにワイト、ゴブリンにトロール。そしてデュラハン。みんな私の想像を超えていて、この世界が人間だけの物ではないと知った衝撃。そしてカイトがいなかったら私は今頃こうやって無事でいられなかったと思う。
「それに私は自分が敵に捕らえられてしまったらジハナムの結界が壊されると聞かされて、ずっと自分を守ってきたつもりでした」
だから私は聖剣カリバーンをロビンから貰った。そして今も私を守ってくれてる。
「でも実際ここに来て、何かが違うと私は感じたんです」
もちろんとても怖い所なんだけど、何かが違う。
「何が違う?」
モルガンの声はとても静かで穏やかだった。
「はい。私の想像ではもっと敵意に満ちていて、もっと恐ろしい場所だと思っていました。私達の世界に出てきた妖精達のように」
ワームもオーガも本当に恐ろしかった。死んでしまうんじゃないかと思った事も何度もあった。
「でも違ったんです。なんていうか、たしかにここは闇に包まれているし、恐ろしい妖精もいるようなのですが、とっても悲しいんです。ここにいると胸が苦しくなるんです」
それはデュラハンに世界樹まで連れてきてもらった時に感じた事。
「なんでこう違うんですか?私を捕まえようとしていた妖精達はあんなに敵意を向けてきたのに、ここでは誰も私を捕らえ様とはしない。それははじめは聖剣カリバーンがあるからだと思っていたのに」
ジハナムに入ってきてはじめに出会ったスクライカーはただ私達を見て叫んでいただけ。バンシーだって私を惑わしたのかと思ったけれど、彼女の言っている事は正論で私を試していたのではないかと今となって思う。だから直接私に敵意を向けてきた妖精はいなかった。それは私達がムガーに案内されていたからなのだろうか?モルガンに招待を受けていたからなのだろうか。
「なるほどな。よくわかった。ありがとう、ユーリ」
「え?……は、はい」
敵の王から感謝の言葉が出てくるとは思わず私はとても驚く。
「ユーリのその問いに私は今は答えないでおこう。自分で真実を知ってまた意見を聞かせてくれ」
「わかりました」
「お前はどう思う。王子よ」
モルガンは今度はノクトに質問をする。
「……なんて言えばいいかわかりません。私は自分が教えられてきた世界と実際の世界が少し違っていて戸惑っているんです」
「お前はすべてを知っているのか?」
すべて。私はまだそれを知らない。
「ずっと知りませんでした。たぶん教えたくはなかったのでしょう」
「古い昔話だ。あいつらは掘り返したくはないのだろう」
妖艶なモルガンが悲しい顔で笑う。
「でもこんなことがあって、私も女王に真実を聞きました。だからここに確かめに来たんです」
「そうか。じゃあ知る覚悟はあるんだな」
「はい」
真剣なノクトの眼差し。真実の先に何があるんだろう。
「ではユーリ。お前に真実を教えよう。こちらに来なさい」
「はい」
私は躊躇することなくモルガンに近づいていく。もちろん私はこれが罠なんてもう少しも思っていない。
そして私はモルガンの近くで跪いた。すると彼女は私の額に手を当てる。
『我が体を流れる失われし記憶よ 今すべてを解き放ち 彼のものに示せ』
柔らかなその言葉と共に、私は少しずつ意識が遠くなっていくのが分かった。しかしそれに抵抗することなく、私はそのまま体を眠りに委ねていった。
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