わたしの隣の魔法使い
第7章 カイトの秘密
【その8】
まだちょっと口に出すのが抵抗がある『黄金郷前駅』に着いた私達。思った通りこの駅で降りる人はたくさんいて、私達は流れに逆らわないように歩いていく。少しでも歩く速度を変えてしまうとすぐにカイトを見失いそうになるので、私はカイトの後ろにくっつくように歩いていった。さすがオープンしたてのテーマパーク。話ではまだチケットは人数制限がかけられていて、アトラクションに二時間とか三時間とか待つようには出来ていないらしい。でも私はこの人の多さにそれは嘘なんじゃないかと思っていた。
「大丈夫?」
背が高いカイトは人ごみの中にいてもすごく目立つ。
「う、うん。すごい人だねー」
「そうだね。まだ開園もしてないから余計かもしれないね」
時計はまだ十時前でみんなオープン前に来ようとしているのかもしれない。みんな考えることは一緒。
大きな駅を出ると、すぐに広いコンクリートの広間が見えてきた。そこにも人がたくさんいて、その先に大きな門が見えている。その門は遺跡にありそうな茶色い石の門で、大きく『エルドラドランド(El Dorado LAND)』と書いてあった。どうやらここが入り口らしい。
「これ、みんな開園を待っている人なんだ」
私はその人の多さに酔いそうになってきた。こんなに人が多い所にくるのははじめて。
「さすがオープンしたての場所だね」
人は少しも流れてなくて門から綺麗に何列かに並んでいる。その後ろでは秘境に冒険に行くような格好をした人がプレートを持って何かを叫んでいた。
「最後尾はこちらです。こちらに八列でお並びくださいー」
周りの人がそのアナウンスを聞いて最後尾の辺りに向かう。
「ユーリ、僕らも並ぼう」
「う、うん」
そして私達もその流れにのって列に並んだ。そして最後尾にたどり着いてフーっと一息つく。
「今が夏じゃなくて良かったね。あっつい中こんなに並びたくないよー」
それでもこれだけの人がいると少し空気が蒸し暑かった。
「だねー。雨じゃなくて良かったとも思うけど」
「たしかに。今日雨だったら大変だっただろうな……」
この人の多さに傘がプラスされるなんてかなり最悪。今日が晴れて本当に良かった。神様、私の願いを叶えてくれてありがとう。
「お、動き始めた」
丁度時間は十時。私は前の人たちの頭で遠くは見えなかったけれど、カイトは見えているみたいだった。ほんの少しずつだけど前に進み始める。周りが少しずつざわつき始めてきた。
「まずどこから向かう?決めてきた?」
「それがね、あんまり調べられなかったんだ。カイトは決めたりした?」
カイトは首を横に振る。
「ううん。じゃあ中に入ってからマップ見ながら決めようか」
「りょーかい。実はアトラクションももちろん乗りたいけど、ショップもまわりたいんだよね」
みんなにお土産も買っていきたいし。真昼にはあれこれ注文をつけられた。
「おっけ。じゃあそんなしっかりアトラクションを周るんじゃなくて、ゆっくり見て周ろうか」
「うん!」
昨日本屋に行った時『エルドラドランド攻略マップ』とかその手の本が数冊売られてて、それを買って予習をしておこうかと思ったけど、知らないまま行くのも楽しいかもしれないと私はそれの購入をやめた。なんでも知ってからいくより、初めて見るものに感動するのもきっと楽しいと思う。
そして少しずつ進んだ列が段々入場門に近づいていく。私はバッグからチケットを取り出して1枚カイトに渡した。
「なんかドキドキするねー」
「そうだね」
きちんと係りの人たちが誘導しているせいか、入場するたくさんの人たちの流れは非常にゆっくり。でも急いで怪我でもしたら大変だろうからこの速度でちょうどいいと思った。
入場門の下には駅の自動改札のような機械が何台も並んでいる。みんながそれに入場券を入れているので私も同じ動作をした。そして出てきたチケットを受け取る。それには今日の日付の刻印がされていた。
「よし!入国ー!」
自動改札を抜けるとまた広い広間が広がっていた。でもそこは今までいた所とは違い、地面が灰色のコンクリートから土のような地面に変わる。でもそれは本当の土ではなく茶色いコンクリートというか、風が吹いても決して舞わない不思議な地面だった。そして周りの建物も遺跡のような造りに変わる。私は急にテンションが上がってきた。
「ユーリ、入国って。ここはどこの国ですか」
「だってここはもう守水市じゃないのよ。エルドラドよ」
なんて言ってみる。でもきっとここの中なら許される発言。カイトは笑っていたけどそれ以上は突っ込んでこなかった。
「さて、どこから周ろうか」
私とカイトは入場の時に渡された地図を広げる。そこには様々なアトラクションやお店の説明が書いてあった。
「うーん。どれも面白そうだね」
エルドラドランドの中はすべてが秘境の遺跡のような造りなのかと思ったら、地図を見ると別のテーマのアトラクションもあるみたいで、あっちのも行きたい、こっちにも行ってみたい、という気になる。
「どれがいい?ユーリ選んでいいよ」
周りには私達のようにまずは地図を広げて見ている人、事前に調べているのか入場と共に目的地に走る人、様々な人たちがいて、それを見ているだけでも自分がテーマパークに来たんだなぁという気になる。
「じゃあ……んー。よし!これから行こう!」
私は『トロッコアドベンチャー』なるアトラクションを指差す。説明には財宝を求めて旅に出るジェットコースター型アトラクションと書いてあった。
「よし、じゃあこっちの方向だね」
そして私とカイトは宝を求めてエルドラドを歩きはじめた。今、私のテンションは最高潮。楽しみにしていたのはたしかだけど、ここまでテンションが上がるとは思わなかった。
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