わたしの隣の魔法使い
第7章 カイトの秘密
【その1】
「結李、パパが会社でこの券もらってきたんだけど、いる?」
朝ごはんのトーストをかじっている時にママが私に2枚のチケットを渡してきた。私はそれをトーストを持っていない方の手で受け取る。チケットには古代文明のような古い時代のデザインに真ん中に大きく文字が書かれていた。
「エルドラドランド?なんじゃこの舌を噛みそうな名前」
「知らない?最近近くに出来たテーマパークらしいわよ。すごく人気で連日すごい人とかテレビで言ってたわ」
そういえば最近、色々ありすぎて忙しくてそういうことがすごく疎くなっているような気がする。いかんいかんと私は思った。たまにはしっかりテレビでも見ないと時代に取り残されてしまうかもしれない。
「でね、その券、今週の土日限定の日にちチケットなのよ。いきなりだけど一緒に行くお友達いる?」
私はそう言われて真昼の顔が浮かんだ。でも土日なんてまた急な。
「今日学校行って聞いてみるよ」
私は最後のちょっとの食パンを口に押し込んで野菜ジュースを一気に飲み干した。お腹が満たされる。
「そう?もしダメだったらママがお友達と行くからチケットちょうだいね」
「はいはい。了解しました」
私は笑いながら玄関へと向かう。別にママが行けばいいのになんて思ったけど、新しいテーマパークに興味があったので、チケットを鞄の中にしまった。
「じゃ、行ってきますー」
「はーい、勉強頑張っていらっしゃーい」
そして私は少し楽しい気分で学校へと登校していった。
「エルドラドランド!今ここのチケット取るの難しいんだよぉ。結李すごすぎるぅ」
朝の朝礼が終わって、少しの休み時間に真昼がママに貰ったテーマパークのチケットを見ながら感動をしている。私は少し鼻が高かった。
「そんなに人気あるんだね。私全然知らなくて」
そんな私に真昼はすごい驚いた顔を見せる。私はその顔がすごくおかしくて笑いそうになった。
「えー!それは守水市の人間の台詞とは思えないわ!エルドラドランドっていったら、今日本で一番注目されている遊園地よ。結李、これは知っておかないと」
私は冗談っぽく真昼に謝る。
「そんなにすごいんだ。私ダメだなぁ」
真昼がウンウン頷くので、私は家に帰ったらもう少し情報を仕入れないとなんて思った。
「それでね、このチケット今週の土日しか使えないんだけど真昼行ける?」
私の提案に真昼はまたすごい驚いた顔をする。そしてすぐに落ち込んだ顔をした。その早代わりな表情に私はまた笑いそうになった。やっぱり真昼は面白い。
「なんで!なんでよりにもよって今度の土日ー!」
「今週はダメ?」
今度は泣きそうな顔をする真昼。
「うん……。両親の用事で土日家を空けるのよー。うわーん!なんで今週なのよぉ」
「そっか……」
そんな予定だったら私も無理には頼めない。真昼はチケットを見ながらあれこれ考えていたみたいだけど、やっぱり今度の土日は絶対に無理なようだった。
真昼には今度一緒にエルドラドランドに行く約束をして、チケットを返してもらった。きっと彼女と一緒に行くテーマパークは楽しいに違いない。どんなに長い待ち時間でもいい気がする。今度の土日はいけないとしても、それは少し楽しみだった。
(どうしようかな……)
授業中、私はチケットを見ながらそんなことを思っていた。エルドラドランド。その名前からは冒険活劇の匂いがすごくする。それだけで胸がワクワクするのに、このままではママにこれを返すことになってしまう。でも真昼以外で誘える人なんて私の近くには……。
「お、それはエルドラドランドのチケットじゃないか」
私の席の隣からカイトがチケットを覗いてきた。
「エルドラドランド、カイトも知っているの?」
「さすがに僕でもそれは知ってるよ。今騒がれているからね」
「あはは。私は全然知らなかったよ」
また授業中の小さな会話。
「まだチケットがなかなか手に入らないらしいのに、ユーリすごいね。いつ行くの?」
「うーん、これ、今週の土日限定のチケットなんだけど、真昼予定があって行けないんだよね」
私の前に座っている真昼はまだ落ち込んでいた。それが後姿からでもすごくわかる。エルドラドランドの破壊力はすごいななんて思って、さらに私は興味が沸いてきた。
「じゃあ、僕はどう?」
「え?」
カイトは輝くような素敵な笑顔を私に向けている。私を殺す気ですかと思った。
「カイトと?」
私はカイトのいきなりの提案に驚く。
「ユーリが誰も行く人がいなければの話だけどね」
ママにこのチケットを貰った時、真昼のことばかり考えていてカイトとは考えていなかった。だってカイトは男性で、テーマパークに男性と二人で行くっていうのはどうなんだろう。そういうことはまったく経験のない私は、どう返事していいのかわからなかった。
「でもせっかくだし……」
そう、せっかくだし。チケットももったいないし。いや、ママが行けばいいことなんだけど……。それでもカイトと二人っきりのテーマパークは行ってみたかった。まあ、ティル・ナ・ノーグだってテーマパークみたいなものかもしれないけど、これはこれ、あれはあれだよね。
「じゃ、カイト、土曜日お願いしていい?」
「もちろん。行ってみたかったし楽しみだよ」
「うん、私も」
意識しちゃいけないけど、これってもしかしてデートっていうやつなんでしょうか。私は胸がドキドキしている。いきなりやってきたカイトとのデート。カイトは純粋にエルドラドランドに行きたくて恋愛感情は私の一方通行だとしても、すごく楽しみになってきた。チケットをもらってきてくれたパパに感謝かもしれない。
「じゃ、朝に迎えにいくね」
「うん!」
こうなったらはやく土曜日がやってこーい!なんだけど、私にはその前にまだやるべきことが残っていた。
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