わたしの隣の魔法使い
第6章 妖精王
【その9】
「到着」
私とカイトは瞬間移動の魔法でマンションの前に戻ってきていた。私はカイトに掴まっていた手を離して少し距離をとる。もう外は真っ暗で、時計は9時を過ぎていた。
「いつもいつもありがとね」
私の言葉にカイトはいつものように笑顔で返してくれる。
「結局、何も分からなかったね」
私達は妖精王について調べる為にティル・ナ・ノーグまで行ったのに、何も調べることが出来なかった。
「そうでもないさ。ユーリの剣が本物の妖精王の剣とわかっただけでも収穫だと思うよ」
「そうなんだけど……」
でもそれだけではせっかくあそこまで行ったのになんだか悲しい。
「ねぇ、カイト。妖精王って今はもういないんだよね?」
今更な質問だけど、そういえばこれをきちんと誰かに確かめたことはなかった。だからカイトに聞いてみる。
「そうだね。僕も妖精王はもういないと聞いているよ。今はティターニア様が女王様だとね」
「そっか。そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
なんだか当たり前のことを聞いて恥ずかしくなってきた。もし存在しているんだったらノクトが案内してくれるはずだよね。でも彼はそういうことは一切言わなかったし。
「ユーリ、デックさんは言ってたじゃないか。真実はいずれわかるってね。そう急ぐことはないよ」
「うん……」
急ぐことはない。たしかにそうなんだけど、私は色々なことが起こり過ぎていてとても気持ち悪かった。
私の体の中にフェアリードロップの力が流れてから夢の中に出てきたロビン。ロビンから貰った本物の妖精王の剣。そして妖精王の紋章。自分のことは調べるなと言うロビン。妖精王のことを調べようとして大きな力に阻止された私達。
でもいくら考えても答えなんて出てこなかった。
「色々考えてもしょうがない……っか。流れに身を任せかな」
「そうそう。きっとなるようになるさ」
そうだといいんだけど。私はそんなことを思った。
「じゃ、僕は帰るね」
「あ、うん。今日は色々ありがとうね」
「こちらこそ」
そしてカイトはマンションのエントランスを出て、前の道を歩き出した。
「あれ?歩いて帰るの」
いつもはここで魔法を使って一瞬で帰るカイト。でも今日はどうやら違うみたいだった。カイトは私の方を振り返る。
「たまには夜風に当たらないとね」
秋の風は少し冷たいけれど気持ちがいい。その気持ちは少しわかるかも。
「じゃ、また明日」
「うん!また明日ね」
そして私はカイトの後姿が見えなくなるまで私は見送っていた。
部屋に戻った私はベッドに座ってフーっと一息ついた。そしてベッドに寝転がる。
「なんか色々ありすぎて頭がパンクしそう」
ティル・ナ・ノーグの美しい地下要塞イグドラ=シル。大きなヒポグリフ。たくさんの妖精が暮らす世界。ドワーフのデック。そして妖精王の紋章。私はそれらを思い出すだけでも目が回りそうだった。私達が普通に暮らす世界の果てには、あんな神秘的な世界が広がっている。それはたぶん誰もが想像できないこと。
「でもなんでロビンのこと調べてはいけないのかな……」
見る前に取られてしまった妖精王の文献。奪ったのはエアリエルとノクトは言っていた。ということは女王様が知られるのを恐れているということなのだろうか。一体妖精王は何者なんだろう。
「ロビンに聞いても教えてくれないよね」
あんなにつらそうな顔で調べないでほしいと言っていた。それなのに私は調べようとしてしまった。それに少し後悔する。
「うん。いずれわかるならそれまで私は調べないでおこう。それでいいんだよね……」
そんなことを呟きながら私はそのまま眠りについていった。今日はロビンの夢を見るかと思っていたけれど、そのまま朝まで夢を見ず眠っていた。
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