わたしの隣の魔法使い


第6章 妖精王
【その7】


 銀色の腕輪から姿を元に戻したカリバーン。黒く美しい剣が私の手の中に握られていた。そして剣全体が鼓動を刻むように赤く光っている。
「それは……、カリバーンではないか!なぜこんな所にある?!」
 カリバーンを見るやいなや、デックは大きな声を上げる。それは私には予想外の驚きでカリバーンをその手から落としそうになってしまった。
「爺、この剣を知っているのか?」
 驚くドワーフの横を飛んでいるノクトがデックに話しかける。
「知ってるもなにも、それは妖精王の剣じゃ。それを何故その娘が持っておる!」
 デックは興奮を隠せないかように震えながらカリバーンに近づいてくる。私はどうしていいのかわからなくて、そこから動けなかった。
「……いや、しかしそれは考えられぬことじゃ。ではこれは一体何なのだ?」
 デックが大きな声で呟いてる。でもその内容は私にはわからない。
「おい、爺。一体何なんだ?詳しく教えてくれ」
 しかしそんなノクトの言葉を無視するようにデックはカリバーンに触れようとする。しかし、もう少しで剣に触れる所でデックは手を下ろした。そして大きく一回深呼吸をする。
「お前ならこの結界を解く事が出来るかもしれぬな」
「え?」
 デックは私を見ながらそう告げる。
「それが本当にカリバーンなら、その刃でこの結界を斬るといい」
「おい、そんなことしたら、この書庫がどうにかなってしまうぞ」
 ノクトが焦りながら会話に入ってくる。
「そうです。前にこの剣の力を見ましたが、すごい破壊力があります」
 カイトも焦っている。もちろん私もこの提案に焦る。そしてカイトの家の庭に作ってしまった大きな穴のことを思い出していた。
「その剣が本当にカリバーンなら、王の力を消すことが出来るだろう。もしダメだったらそのカリバーンは偽物というわけじゃ。判断はお前達に任せる」
 本物ならば結界を消すことが出来る。私はその言葉に手に握るカリバーンを見つめた。今でもカリバーンは赤い光を放っている。
(ねえ、あなたは本当に妖精王の剣なの?)
 カリバーンはそれに答えるように小さく震え始めた。もしかして、あなたは私にこの結界を斬らせたいの?
「私、やってみようかな……」
 なんだかカリバーンは私に力を使えと言っているように思える。自分の主人のことを知って欲しいと。それにこれを出来るのは私だけなんだろう。ここで私がやらなければきっと後悔する。
「お前、本気で言っているのか?」
 私はノクトに頷く。
「ユーリ……」
 カイトも心配そうに私を見ている。でも私はもう心に決めた。
(大丈夫。私はカリバーンを信じている)
 ロビンが本当に妖精王なのか、私にはまだわからない。でもロビンが私の首筋につけた紋章。そして聖剣カリバーン。これがすべて偶然でというわけにはもういかなくなっていることくらい誰にでもわかること。だから私は自分の判断を信じることにした。私にはこの妖精王の結界を壊すことが出来るはず。
 そして私は少し後ろに下がってカリバーンを構える。他の人たちも後ろに下がった。
(ロビンは言った。もっと願えと)
 私は剣を持ち、カリバーンに願いを込める。私にあなたの結界を破る力をと。すると剣もそれに答えるようにさらに赤く光りだす。そして私は剣を振り上げ、思いっきり振り下ろした。
(お願い!カリバーン!)
 カリバーンから赤い閃光が結界に向かって走る。前にオーガに放った閃光よりも強い光。きっとそれは私の願いに迷いがない証拠なのだと思った。
 そして閃光は結界に命中する。それと同時に大きな衝撃と音が書庫のドーム型の空間に響いた。



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