わたしの隣の魔法使い
第6章 妖精王
【その1】
私は学校へ行く道の途中で前を歩いているカイトを見つけた。私は少し早足になる。そしてカイトに声をかけた。
「おはよう、カイト」
カイトは私の声に立ち止まり振り返る。
「あ、ユーリ、おはよう。いい天気だね」
朝から眩しいカイトの笑顔。昨日魔法を使いすぎて何度か足をふら付かせたカイトだったけれど、今日は元気そうで私は安心した。髪の毛の色も黒に戻っている。
「今日カイトが休んだらどうしようかと思ったけど、大丈夫そうで良かった」
私はカイトの制服姿を見て、昨日涙をつけてしまったことを思い出した。洗えなくてごめん、カイト。
「寝たら治るって言ったじゃないか。僕は嘘は言わないよ」
「そうだね。ごめんごめん」
たしかにカイトは嘘は言わない。でも私の為に無理をしてしまってないかやっぱり少し心配だった。
「今日、放課後にあっちに行くってノクトに伝えておいたよ。そしたら書庫に案内するって」
「書庫?妖精の国にもそういうのがあるのね」
私は妖精の国について、行った事のある場所しかわからない。だから新しい所に連れてってもらえるのに胸を躍らせた。それに書庫っていったら本がたくさんある場所。本好きの私は今すぐにでもそこに行きたい気分になった。そういえば夢の中でロビンに連れて行ってもらった水晶の庭園という場所は本当にあるのかも確かめてみたいかも。
「僕もあそこはあまり奥まで行ったことないから少し楽しみかも」
「え?カイトでも?」
「普段必要ないからね。僕はただジハナムの妖精達を退治していただけだし」
「そうなんだぁ」
なんだか意外だった。私はカイトは何でも知っていると思っていたし、どこへでも行けると思っていた。でもどうやらそうではないみたい。
「知識としては僕の父や祖父なんかが書いた妖精国の本で知っているんだけど、実際は行った事のない所ばかりなんだ」
「あー、借りた本の中にもそういうことが書いた本あったよね」
「そうそう。そういうのとかね」
たしか『妖精国とは』なんていう見出しの本が借りた本の中にあった。中身は本当にそんな場所あるの?というような不思議な場所ばかりで私は信じられなかったけど。カイトも私も知らない所に一緒に行くことができるということが、私にはちょっと嬉しかった。
「ゆーーーりーーー!」
カイトと妖精国の話をしていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ、真昼ー」
真昼が私とカイトのいる場所にダッシュで走ってくる。
「おはよう、真昼。一昨日はごめんね」
一昨日の文化祭、私は勝手に帰ってきてしまった。色々なことがあって忘れていたけど、真昼の顔を見てそれを思い出す。あの時は本当に申し訳なかった。
「あーあー!いいのいいの。私も無理やり誘っちゃったしね。あ、滝沢君もおはようー」
カイトは真昼に微笑みながら朝の挨拶をする。そんな顔で挨拶したら、真昼だって胸うたれちゃうってば。
「……私も一緒していい?」
私はカイトに一瞬目線を上げる。カイトは笑顔で軽く頷いていた。
「いいよいいよ、もちろん」
真昼がいると妖精の話は出来ないけど、3人で登校なんて賑やかでなかなか良かった。
「そういえばね、合コンの日程決まったの!」
「え?え?もう?」
文化祭の日、真昼と真昼の中学のときの友達とでそんな話で盛り上がっていたっけ。それがこんな早いなんて私は真昼の行動の早さにびっくりする。
「明日の放課後になったわ!場所は駅前のカラオケ店。いいよね?いいよね?」
それも明日って。さすが真昼さん。
「う、うん」
私は真昼の勢いに負けて、そこで頷いた。
「よっしゃ。あとのメンバーは有子に香奈よ」
その二人は私のクラスの人達。普段から彼氏ほしーなんて言っていたような気がする。それなら真昼のこの急な予定に快く頷いただろうに。
「へぇ、ユーリと小宮山さんは合コン行くんだね」
そこでカイトが話に入ってくる。私はハッとした。
「そうなのそうなの。滝沢君も女なら誘うんだけどなぁ」
「残念。僕は男なもので」
二人はそんな話をしながら笑っている。私はなんだかすごく複雑な気分だった。
そして私を含め3人は学校の校門をくぐり、校舎の中に入っていった。
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