わたしの隣の魔法使い
第4章 ロミオとジュリエット
【その3】
私は真昼に連れられて駅前のアイスクリームショップに来ていた。最近出来たばかりでとても評判がいいらしい。周りに学校がいくつもある為、色々な制服を着た人が店内にはたくさんいた。私と真昼もその中に紛れる。
「うーん、迷うなぁ。今日はどれにしようかな」
アイスは36種類ととても種類豊富で、隣の真昼はかなり迷っている。私もレジを待つ人の列に並びながら何にしようか悩む。王道のバニラか一番人気のストロベリーチーズケーキか、シャーベット系もいいかもしれない。うーん、これはかなり悩む。
「よし、決めた。今日は大人っぽくモカ&バニラにしよう。結李は決めた?」
「うううーーん。とりあえず今日はバニラにしようかなぁ」
「あ、わかるわかる。はじめってとりあえずバニラで味を見ようとか考えるよね」
「うんうん」
そしてお会計をしてアイスを手に私と真昼は外に出る。10月という冬が近い季節でもアイスは1年中美味しい。私は手に持ったアイスを一口食べる。
「う、美味いじゃない」
一口食べると濃いバニラの味が口の中に広がった。でも全然しつこくない。これは当たりのバニラアイスかもしれない。
「でしょ。チェーン店だけど美味しいって評判だったんだよね。近くに出来て嬉しいわぁ」
駅前は急速な開発ラッシュで色々な店が立ち始めている。真昼の話では半年くらい前までは全然使えない街だったらしい。今引っ越してきて私はラッキーだったかもしれない。
「ねえねえ、真昼」
「ん?」
真昼は美味しそうにアイスを頬張っている。私は食べるのが早い方じゃないけどもうコーンまで到着しているので、真昼はとてもゆっくり食べているみたいだった。
「真昼もカイトのファンだったりするの?」
昼休みにカイトの話をしていた時に聞き忘れていたことがある。それは彼女もカイトのことが好きなのかどうか。それを知ってどうなることではないけど、なんとなく聞きたかった。
「え?なんで?」
「取れないチケットを取ったりしているからファンなのかなーなんて思って」
真昼の話では飛鳥学園の多くの生徒がカイトか芽衣のファンと言っていた。なら真昼もカイトのファンでも別におかしくはない。
「あはは。別に私は滝沢君に特別な感情は持ってないよ。まあ、カッコいいなーとは思うけどね」
「そうなんだ」
私はアイスのコーンをあと一口まで食べ終えて、最後の一口を口に入れる。甘いコーンの味が口の中に広がる。アイスも美味しければコーンも美味しい。これはママにも教えてあげないと。
「私は同じ歳の男子より年上が好きなんだよねー。包容力っていうの?男はそういうのがなくっちゃ」
「包容力かー」
私にはそういうのはよくわからない。そういえば私はどんな男の人が好きなんだろう。
「結李はどうなのよ?滝沢君とずいぶん仲がいいみたいだけど、何かあるの?」
真昼の目が少し光ったような気がした。
「え?何かって?」
「滝沢君って基本誰にでも優しいけど、結李とよく話をしているなーなんて思って見ていたんだよね。もしかして滝沢君に好意があったりするの?」
「え?私が?でもカイトには婚約者がいるんじゃない?」
「は?婚約者?!滝沢君に?!」
私はそのあまりにびっくりする真昼の表情に自分が言っちゃいけないことを言っているんだと悟る。そして私は急いで言葉を濁す。
「いやいやいや、あ、あれくらいかっこよくて、でも彼女がいないならそういう人がいてもおかしくないかなーなんて思って。そう思わない?」
その無理やりな言い訳に真昼は大きな声で笑う。
「あははは。なんだ、びっくりした。今時婚約者って、いつの考えよ。それは絶対ないねー」
適当にごまかしたのを真昼は信じてくれたようだった。私はホッとする。もしかして、カイトと芽衣のことって秘密だったりするのだろうか。
「あー、もしかして結李って恋愛音痴だったりするの?」
真昼が私を見てニヤニヤしている。私はそれを見て苦笑いをしてみる。
「恋愛音痴かー。たしかにそうかもしれないや」
「えー?それを認めちゃうの?」
「なんかね、よくわからないんだよねー。恋愛って」
「え?」
私は帰りながら真昼と恋愛について話をした。
私は頻繁に転校をして一つの場所に留まらない。だから誰かがいいなぁなんて思ってもそれ以上発展することはなかった。そしてそれが本当に『恋愛』と呼ばれるものなのかもわからなかった。だからカイトをかっこよくおもったり、少し愛しく思ったりしてもそれはただ芸能人に憧れる女の子と変わらないのではないかとも思ったりもする。恋愛って一体なんなんだろう。
「うーん、あらためて言われると難しいなぁ」
「でしょ?かっこいいと思うだけでそれが恋愛なのかよくわからないんだよね」
真昼は難しい顔をしている。私、変な話題を振ってしまったかな。
「私は中学の時付き合っていた人がいたけど、かっこよくて付き合っただけですぐ別れちゃったんだよね。そう考えるとあれも恋愛していたのか微妙な所かも」
「真昼、付き合っていた人いたんだね」
真昼はえへへと少し恥ずかしそうにしていた。そんな仕草が可愛い。
「でもこうやって恋愛の話をするとみんな口を揃えて言うかな。『いつ何をしてもその人のことを考えてしまう。一緒にいるとドキドキしてどうしようもならなくなる』って。そういうことって結李はない?」
「うーん、どうだろうなぁ」
今まで考えたことはなかった。カッコいい人がいてもその場限り。ずっと誰かを考えるなんてしたことがないかもしれない。それに私はすぐにその場からいなくなってしまう。
「ま、恋愛なんていつはじまるかわからないし、結李もそのうち分かるときがくるよ」
真昼は私の頭を軽く撫でてくれた。そして照れる私にこんなことを言う。
「で、もし、そう言う人が現れたら一番に私に言うんだよ。恋愛話ほど楽しいものはないんだから」
私は真昼を見ながらはいはいと頷いた。
「あれは絶対楽しんでいるなぁ」
真昼と途中の道で別れて、私はマンションに向かって歩いていた。もう太陽は落ちて空は暗いけれど、街頭が頻繁に立っている為、特に危ないとは感じなかった。それに駅から帰ってくる人たちもけっこう歩いていた。
「恋愛か……」
私がカイトと恋愛をする。それは考えてなかった。考えようとしていなかったのかもしれない。
かっこよくて優しくていつも傍にいてくれるカイト。
「ダメよ。それだけはきっと考えてはいけないんだ」
彼には婚約者がいる。カイトは芽衣にあんなに優しい笑顔を見せていたじゃないか。その間に入ることは出来ない。
「きっといつか私にも恋愛する日がくるよね」
そして私は家へと帰っていった。自分が恋愛する日を夢見ながら。まあ、今は全然想像出来ないんだけど。
<< 前へ
戻る
次へ >>